人が目の前で倒れた時は、「119番通報」「胸骨圧迫(心臓マッサージ)」という概念がTV でも講習会でも言われてきました。

これはアメリカ心臓協会AHAが2008年3月末に発表した「ハンズ・オンリーCPR(Hands only CPR」がおおもとになっています。

「救急蘇生法の指針2015」でも
成人の心停止に対して市民が行う心肺蘇生では、胸骨圧迫のみでも、人工呼吸を組み合わせた場合と比べて転帰に遜色がないことを示す複数の報告があるとされています。

人工呼吸を行わない胸骨圧迫だけでも、人工呼吸と胸骨圧迫の組み合わせでも心拍再開率は変わらないというデーターが出たからです。
人工呼吸をしなくても人が助かるのであれば、これに越したことはないと思います。

人工呼吸といえば、「口対口」の人工呼吸が思い浮かべると思いますが、やはり他人の口に自分の口を当てて呼吸を助けるというものは、気持ち的に抵抗があるのと、また手技的にも難しいということで、心肺蘇生法を実践する上での大きな障壁となっていることも理由の一つです。

前文のような記載をしていると、このブログを読んだ方から見れば「じゃあ人が倒れたらとりあえず胸骨圧迫だけしていたらいいじゃん」と思う方もいると思います。

今度は、人工呼吸をしなくてもいいという理由を、掘り下げて説明しようと思います。

人工呼吸の省略で胸骨圧迫のみとは

人工呼吸の省略で胸骨圧迫のみでもいいという条件があります

  • 成人
  • 目の前で突然倒れた人
  • 病院の外

上記以外の条件では、これまで通り人工呼吸を伴う30対2のCPRです。

なぜ、上記が記載された条件だけの人なのでしょうか?

成人の心停止の原因は、突然生じる異常な心リズムで、多くの場合は心室細動(VF)です。
VFによって心臓が痙攣するため、重要な臓器に十分な血液が送り込まれない状態です。突然倒れる前は、おそらく正常な呼吸を行っていました。つまり、心停止後の数分間は、血液中に十分な酸素がある可能性があります。

そのため、成人が心停止で突然倒れても、その肺や血液には最初の数分間は重要臓器を健康な状態に維持できる十分な酸素が含まれています。中断を最小限に抑えて質の高い胸骨圧迫を行えさえすれば、心臓と脳に血液を送り込むことができます。これらの理由から、傷病者の近くのいる人が突然心停止した人にできる最も重要なことは、脳と心筋に血液を送り込み、肺と血液にまだ残っている酸素を供給することです。

次回は人工呼吸を併用するCPRが必要な状況について述べていきます。