呼吸器系は、気道・肺・縦隔・胸膜・横隔膜からなるが、扱う疾患は各臓器の病変のみならず、呼吸中枢の異常なども含まれ、多彩である。

呼吸器系の解剖図

呼吸器系の特性として、

  • 外界と通じている開放系である
  • 血流の豊富な臓器である
  • 換気・血流および肺そのものが重力の影響を大きくうける
  • 肺胞(気相)と毛細血管(液相)が接してガス交換を行う
  • 免疫機構が発達している

特性およびその破綻により肺におびただしい数の疾患が発生することも特徴である

肺は外呼吸をつかさどる主要な臓器であり、体内に酸素を取り入れ老廃物の二酸化炭素(炭酸ガス)CO2を体外に排出するガス交換を行うことが究極の役割である

ガス交換の過程は、換気・拡散・循環(血流)の3段階に分けられ、これらを制御しているのが呼吸調節系である。

換気

換気は、呼吸運動によって空気が肺胞へ、また肺胞から外界へと移動する働きを指し、呼吸の基本的な要素である
換気の異常には、低換気(換気不全)と過剰換気がある。換気不全により肺胞低換気になると酸素の取り込みが落ち低酸素血症となるが、同時にCO2排出も障害されて高CO2血症となり、血液が酸性に傾く(呼吸性アシドーシス)。逆に換気が異常に亢進すると、体内にCO2排出が過剰担って低CO2血症となり、血液がアルカリ性に傾く(呼吸性アルカローシス)

拡散

肺胞と毛細血管との間のガス交換は拡散(ガスが圧の高い方から低い方へ移動する現象)によって行われる。肺胞腔に到達した酸素は、この圧勾配で肺胞腔から毛細血管に、逆にCO2の毛細血管から肺胞腔内に移行する
CO2の拡散能力は酸素およそ20 倍と高いため、肺胞壁で拡散が障害されてもCO2排出にはほとんど問題ないが、酸素の取り込みは容易に障害されて低酸素血症になる

外呼吸と内呼吸

循環

 肺循環は小循環ともよばれ、右心室→肺動脈→肺胞→肺静脈→左心房の流れで全身の組織で生じたCO2を含む静脈血に再び酸素を送り込み動脈血化する循環である
 肺胞から毛細血管に取り込まれた酸素は赤血球中の還元ヘモグロビンと結合して酸化ヘモグロビンとなり、全身の組織へと結ばれる。一方、組織で生じたCO2の70%は血漿中に重炭酸イオン(HCO3-)として存在して肺胞まで運ばれるため、物理的に溶解しているのはCO2は5%程度にすぎない
 肺循環障害の代表的疾患は肺血栓塞栓症・肺梗塞である。血流の豊富な肺は全身の血液が必ず一度は通過するため、がんの血行性転移も生じやすい

呼吸調節

呼吸調節系
呼吸の速さ、深さ、リズムを決定し、動脈血酸素分圧(PaO2)および二酸化炭素分圧(PaCO2)を一定に保つしくみを呼吸調節系と呼ぶ
呼吸中枢は延髄・橋に存在し、呼吸調節の自動制御センターの役割を果たしている。情報を受け取り呼吸中枢に情報を伝達する見張りセンサーの役割を果たしているのが化学受容体で、中枢化学受容体と末梢化学受容体がある。

中枢化学受容体は延髄腹側に存在し、血中のCO2の上昇を感知して呼吸中枢に情報を送る主経路である。

末梢化学受容体は頸動脈体と大動脈体に存在し、PaO2の低下を感知して呼吸中枢に働きかける作用がある

肺の伸展状況をモニターするセンサー(肺伸展受容器)からも情報を得て、肺の伸展具合を呼吸のリズムに反映する

呼吸運動
肺は自らの弾力で縮もうとする性質がもともとあるが、自然呼吸時の胸腔内圧が常に陰圧のため外側に引っ張られる力で膨らんでいる。肺は自律的に動くことのできない臓器のため、周囲の呼吸筋(横隔膜や肋間筋)の収縮・弛緩とそれに伴って起こる胸腔内圧の変化により換気が行われる。

換気モデル

安息時の吸息の約70%が腹式呼吸、30%が胸式呼吸である。
腹式呼吸は横隔膜が主として働く最も効率によい呼吸であり、胸式呼吸では外肋間筋が収縮して胸腔を拡げる。
呼気時にはこれらの筋が弛緩するだけで自然に肺が収縮する。深呼吸や運動、病的状態での努力呼吸時には、吸気時の斜角筋や胸鎖乳突筋、呼気時の内肋間筋や腹筋群などの呼吸補助筋が使われる