乳児および小児では、呼吸器系緊急事態が急速に呼吸不全へと進行し、最終的には心停止に至る。
早期介入ができれば、良好な転帰(神経学的後遺症のない生存退院)が得られる。だがいったん小児が心停止に陥ると、一般にその転帰は不良である

今回、呼吸器系緊急事態で、ポイントで押さえて行くことが大事である

  • 小児は、解剖生理学的特徴から、気道閉塞や低酸素血症、呼吸筋疲労をきたしやすく、急速に呼吸不全から心停止に陥る
  • 小児の呼吸障害のアセスメントでは、呼吸数、呼吸様式、呼吸音、全身色の評価し、重症度(軽度な呼吸障害、重度な呼吸障害)とタイプ(上気道狭窄、下気道狭窄、肺実質障害、呼吸調節障害)を見極める必要がある
  • 呼吸窮迫・呼吸不全への移行を回避するために、小児においては、特に、安静による酸素消費量や呼吸仕事量の軽減が重要となる

小児の呼吸評価

1、小児の呼吸の特徴

解剖生理学的特徴
小児は、その解剖生理学的特徴から、気道閉塞や低酸素血症、呼吸筋疲労をきたしやすく、容易に呼吸不全に陥る。また、自ら症状を訴えることができない場合が多いため、これらの特徴を理解したうえで、呼吸状態を評価することが重要。

子供は気道が狭く、軟弱で容易に閉塞する。また酸素消費量が大きい割に呼吸筋の収縮効率が悪く、かつ酸素予備能が低いなどのため、総じて低酸素血症に曝されやすい。そのため迅速かつ適切な対応が求められる

  • 後頭部が大きく、仰臥位では頭部が前屈するため、上気道閉塞をきたしやすい
  • 口腔内腔に比べて舌が大きい
  • 気管が細い
  • 肋骨が水平位であり、胸郭運動の効率が悪い(下図↓)
  • 肺胞の伸展度が低く肺胞数が少ない
  • 腹部膨満など腹圧上昇による影響を受けやすい
  • 6ヶ月未満の乳児は鼻呼吸依存である鼻閉(分泌物貯留、粘膜浮腫など)は、気道閉塞の原因になる
  • 口呼吸は5〜6ヶ月以降に始まる
  • 呼吸調節システムが未熟であり、薬剤や低体温などで、呼吸中枢が抑制されやすい

2、呼吸の評価

①呼吸数

●小児においては、年齢によって正常呼吸数は異なる(PEARSテキスト P44参照)。
年齢に問わず60回/min以上の頻呼吸は異常である。成人では、呼吸が苦しくなれば、深呼吸で代償するのに対し、小児では、肋骨・横隔膜が水平位にあるため深呼吸での代償が難しく、呼吸回数を増やすことで代償する
●小児の1回換気量は成人と同じですが、酸素消費量が多く、機能的残気量が少ないと言うアンバランスから、おのずと呼吸回数が多くなる。呼吸数は、頻呼吸、徐呼吸、無呼吸(PEARSテキスト P45参照)を評価する
●分時換気量(MV)=1回換気量(TV )×呼吸数(RR)で表される
・1回換気量の低下(呼吸器疲労、肺コンプライアンス【肺の膨らみやすさの指標】の低下、死腔の増加、低酸素など)代償する
・分時換気量の増加が必要な場合(感染・術後・外傷・熱傷などによる体内の二酸化炭素産生が多い状態、代謝性アシドーシスの代償など)に、呼吸数が増加する

②呼吸様式

●呼吸様式の変化は、肺コンプライアンスの低下(肺炎、肺水腫など)や気道抵抗の上昇(分泌物の貯留、細気管支炎、気管支喘息など)に伴い生じる
●小児では、肋間筋を有効に使うことができず、胸郭コンプライアンスが高い(胸郭が柔らかい)ため、様々な呼吸様式(PEARSテキスト P46参照)の変化を呈するので、細やかな観察と評価が必要である

鼻翼呼吸吸気ごとに鼻翼を拡大させる呼吸
陥没呼吸呼吸筋を使って吸気を増やそうとするが、肺の弾性力の低下または気道抵抗
の上昇のために、胸郭、頸部などが内側に向かって凹む呼吸
吸気性喘鳴上気道(胸腔外)の気道閉塞を表す
呼気性喘鳴下気道(胸腔内)の、特に末梢気道の閉塞を表す
呻吟末梢気道や肺胞の虚脱を防ごうと呼気終末に喉頭を狭め(結果、「うっー」
とうなるようになる)、呼気終末陽圧(PEEP)を維持しようとする呼吸
シーソー呼吸吸気時に胸郭が陥没し腹部が拡張する。呼気には逆の動きになる
呼吸障害に見られる症状
陥没呼吸の部位と重症度

③呼吸音

●呼吸音は、気管音、気管支肺胞音、肺胞音を確認し、副雑音の有無と種類を評価する
また、左右対称に聴取し、左右差の有無を確認すると同時に、背部からの聴取も行う(PEARSテキストP48参照

    分類       音の特徴  考えられる原因
stridor(ストライダー)主気管支で吸気に聞こえる狭窄音上気道閉塞
wheeze(ウィーズ)「ヒューヒュー」という笛様音気管支喘息、気管内異物
rhonchi(ロンカイ)「ゴロゴロ」といういびきの様な音痰の貯留、
太い気管支の狭窄音
coarse crackles
(コース クラッカル)
「ブクブク、ブツブツ」という低めの音
粗い水泡音
吸気相早期に聴取
肺水腫、肺炎
fine crackies
(ファイン クラックル)
「バリバリ」という細かい破裂音
細かい捻髪音
吸気相後期に聴取
肺胞に伸展性低下
間質性肺炎、肺気腫
肺繊維症など
副雑音の分類

④ 重症度による呼吸障害に分類

  • 軽度な呼吸障害
  • 重度な呼吸障害
重症度による呼吸障害の分類

⑤ 呼吸障害のタイプ

  • 上気道閉塞
  • 下気道閉塞
  • 肺組織(実質)病変
  • 呼吸調節の障害
呼吸障害